イングリッシュローズコテージの小さなお庭


Garden Essay - 小さなお庭で見つけた幸せ
 
2002年03月30日
我が家の庭は”嵐が丘”の舞台

   
 球根の中でも、春一番早く可愛らしい顔を覗かせるScilla "Siberica"

 水曜日の大雨に続いて、1日置いての昨日の豪雨で、今朝は咲き始めたばかりのチューリップや水仙もすっかりうなだれています. 春の天候は本当にCrazy! 台風のような風嵐と共にやって来て、すくすくと伸び始めた小さな草花の子供たちに情け容赦なく、バケツをひっくり返したかのように、滝のように降り注ぎ、その間、子供たちは顔をうなだれ、雨の過ぎ行くのをじっと辛抱して待っています.特に我が家の庭は毎年、早春から夏が終わるまで、”嵐が丘”と呼ぶにふさわしいシーンが繰り広げられるのです.15階建ての高層マンションが周囲に立ち並び、その合間の空間を縫って、行き場を失った風が総力を結集して突風隊を形成し、息せき切った台風のようなビル風となって吹き抜けてゆくのです。

  東から西へ吹き抜ける強風が吹き続けるのは春から夏にかけて常時のことで、風の吹かない穏やかな春の日を楽しめるのは3日か4日のうちの1日くらい.早朝と夕方はひっそりと静かな平和な園である我が家の庭が朝8時を過ぎると、風の通り道と化し、忙しく風が行き交うのです.風にも勤務時間があるのでしょうか? 夕方4時を過ぎると徐々に収まり始め、5時にはすっかり本日の勤務も終わったようで、何事もなかったかのように静けさが戻ってくるのです. 

  もっとも最悪なのは低気圧の接近に伴い、最強の台風が上陸したかのような竜巻のごとき風嵐が発生する時です。 春から初夏にかけての庭が一番美しい時期に1度か2度、強盗のように襲って来るのです。 まるでお庭に巨大なミキサーが作動しているかのように、ぐるぐるとかき混ぜる強風が発生すると、もうなすすべもないのです。1年前の種蒔きから、ようやく大きくなってすみれ色や美しい青紫の蕾を下の方から少しづつ色づかせ始めたデルフィニュームやジギタリスはどんどんなぎ倒されてゆきます。この強風のすさまじさを知らなかった私たちは最初の年、支えるためにガーデンスティックのバーを使い、デルフィの茎を上下何箇所かビニタイで八の字にゆるく結わえて支えたのが、災いの元となり、結局、結わえたところでグッサリと皆折れてしまい、嵐が収まった夕方、様子を見に行ったら、皆、斬首刑を執行されたかのように、首が折れてしまっていて、泣く思いをしたのです.特に丹精こめてお世話してきたpekoちゃんの、がっかりした顔を見るのも辛くって...。

  薔薇たちも悲惨です.普段、吹き荒れる強風に慣れているとはいえ、”竜巻君”がやって来るとお手上げです.ぐるぐるにかき回され、蕾のたくさんついた柔らかい新芽の先を吹き飛ばされ、若葉は自らの刺で思いっきりずたずたに傷つけてしまい、助けるすべを持たない私たちは、ただただ、過ぎ行くのを待つしかないのです.ふんわりとしたパステルカラーのドレスをまとって、思い思いにパーティーを楽しんでいる、ハイシーズンの薔薇たちを襲う強盗のような風嵐には本当に悲しくなります.嵐の過ぎた翌朝まだ暗いうちに起き出して、助け起こしに庭に出る私たちを待つのは、すてきなドレスをまるで追いはぎにあったかのようにずたずたにされてしまって、泣きださんばかりの表情の薔薇の女の子たち.

  つる薔薇スパニッシュビューティーを絡ませたダブルのアーチは強く叩き続ける意地悪な東風にアーチもろとも、根っこまでもぎ取られそう. 立っているのがやっとのお庭で、せめてものロープをアーチにかけて、東側のフェンスやベランダの手すりに結わえて強風に持ち上げられて、持っていかれないよう防いだり、アーチの基部に杭を打ち込んでは、ぐらぐらしないよう支え、「怖いよう!」と叫ぶ子供たちを助けるため、台風対策同様の体制をとるため、出動することもありました.

  幸い、昨年は夏から秋にかけての台風シーズンの被害を除くと、5月の薔薇のシーズン中は何とか、竜巻君の襲来を免れることができて、そのようなことは例年なかったことなので、1番花が無事に咲き終わって、ほっと胸を撫で下ろしたのです。 もっとも毎日のように吹くビル風の被害により、デルフィやジギタリスはほっそりとした長身の体を地面に叩きつけられて倒れ、....半分ほど横たわった体から懸命に伸び上がり、花を咲かせ続けようとするその頑張りやさんの姿には本当に胸が傷みましたが....。

  
  今年の春はどうでしょうか.ビル風が常時発生する゛嵐が丘”の舞台は変えることはできなくとも、願わくば、乱暴者の”竜巻君”が我が家のお庭の存在に気がつかないで、通り過ぎてくれますように! 春の風嵐に知られることのない、秘密のお庭でいられたら、どんなに安心でしょうか。

               


 

    * 雨が上がって、しばらくして晴れ間が見えてきて、水仙や
  アーチの中のパンジーたちも顔を起こし始めてきました.

  
 
 
   





次ページへ

 K's Rose Garden トップへ戻る   Garden Essay目次へ戻る

* 当ホームページに掲載されている画像、文章を含む全ての内容の無許可転載、転用を固く禁止いたします。全て
の内容は日本の著作権法及び国際条約によって保護を受けています。