イングリッシュローズコテージの小さなお庭


Garden Essay - 小さなお庭で見つけた幸せ
 
2002年04月15日
ブン太郎との再会!

  ブルーベリーの花が咲きはじめると、ブ〜ンという羽音と共にやってくるのが、アーモンドのように大きな黒いつやつやした目にオレンジ色のブルマーのようなパンツをはいたあの子です. ころころに太ったおなかに、もこもことした黒い上質のビロードのようなジャケットを着込んでいます。 名づけて”我が愛しのブン太郎”. 大きさもさまざま、まだ小学生のように小さな子もいれば、お兄さんのようにがっしりした体の大きな子もいるし、お母さんのように優しいまなざしの子もいます。 ちょっと縞の入ったオレンジ色のパンツがまるでトラの子供のように可愛くって..。
  
  ハチの仲間なのに、私にはどうしてもネコ科の仲間に思えてならないのです.むくむくした子猫のように毛むくじゃらの体で、花から花へと浮遊しているブン太郎を見ていると、じゃれて遊んでいる子猫そっくりなのですもの。 時折、隣で作業している私の顔を覗き込むように旋回しながら、目はとてもいたずらっ子のように笑っているの.
      


  どの子も皆、私がとりわけ愛情を込めて、ブンちゃん、ブン太郎と呼んで可愛がっている熊蜂の仲間達です。 とりわけ、毎年、春一番に会う子には昨年以来、久方ぶりに再び会えた懐かしい気持ちになり、本当は去年の春に会った子とは違う子なのでしょうけれど、私を覚えていてくれたかのようなその人なつっこい大きな目を見ると、「こんにちは! また今年も遊びに来たよ.」と私に挨拶してくれているように思えてならず、きっとこの子は去年会ったあの子に違いない!と信じてしまうのです. 

  そう信じた方が再会がずっと感動の日になれるし、感激した分、ブン太郎への愛着が一層、強くなるし、ブンちゃんが遊びにきてくれるシーズン中、 ずっとずっと幸せな気持ちで過ごせるから...。 甘い花の香りに誘われて、2種類あるブルーべリー、ホームベルとティフブルーを交互に行ったり、来たり。 飽きると草花達にキスしに庭中、忙しく飛び回ってはやっぱりブルーベリーに戻ってきます.

                     


  春が2週間も早く訪れた今年は、とりわけいつもより随分早くお庭にやって来ました。ぐんぐん上昇した気温と先週からの雨の繰り返しで、徒長し、すっかり背高ノッポになってしまったビオラや、切花に摘むのにちょうどよい背丈になったパンジーたちが、まるで舞台の上で、背筋を伸ばして皆で同じ方向を、まるであちらに指揮者がいるかのように、顔を揃えて見つめ、背筋を伸ばし、大きなお口を開けて、皆で声を合わせて歌っているコーラスの楽隊のように見えます. 
          

  そしてコーラス隊が、春を謳歌する優しいメロディーを奏でている中、いきなり不協和音が入り込んだかのように、ブ〜ン、ブンとやってきては、みんなの顔に自分の顔を押し付けて、感激の握手を求め、あちらへ行ったかと思うとこちらにと、あてもなく漂いながら、甘い花粉をホッペにつけながら、夢紀行を楽しんでいる、にぎやかで可愛い子達です.

                   

  おとといの早朝、pekoちゃんが駐輪場で飛べずに倒れているブン太郎をティッシュに包んで連れて帰ってきました.「あのままじゃ、バイクに踏まれてしまうから連れてきたけれど、どうしたらいいだろうね。すごく弱っているみたいだよ.」 pekoちゃんは大事に連れてきたブンちゃんをティッシュを開いてそっと見せてくれました.車に当たったのか、誰かに手で叩かれたのか、本当に動くこともできず、横たわっていて、目だけ、きらきら命の灯火がともっています.
そうねえ.としばしの思案の後、蜂だからやっぱり花の蜜をあげるといいんじゃない? 蜂蜜を食べさせてみようか?と言うpekoちゃん。 その途端、ちょうどテーブルにセットしてあった朝食用のバターやメープルシロップに目が止まりました. そうだ! メープルシロップがいいんじゃない? カナダ産のカエデから取った純粋のメープルシロップだもの。食べたらきっと元気を回復できるはず。

  朝のお茶もそこそこに2人で早速、庭に出て、八角花壇の横のビオラの鉢の中、薄いパープルがかったピンクのビオラの花のベッドにブンちゃんを寝かせ、pekoちゃんはお箸の先を使って、ブンちゃんの鼻先にシロップをたらし、2人で息を凝らしてブンちゃんの口元を見つめます.

               

 
  「ブンちゃん! 一口なめてみてごらん。 そうしたら、きっと元気になれるよ。」
ブンちゃんは聞こえているのかいないのか、目をパッチリと見開いたまま、いくらか手を機械仕掛けのお人形のように動かしましたが、でもやっぱりぐったりしたまま。 でもよーく見ると、お鼻のあたりの触覚?がちょっぴりヒクヒク動いています. 何とか少しでも蜜を吸って元気になってほしい! でも、随分弱っているみたいだからやっぱり駄目かもしれないね。と2人で話しながら、覗き込んでしばらく待っていましたが、もう出かける時間です. 
後ろ髪を惹かれながら出かけ、5時間後に帰宅し、早速八角花壇の所に行ってみます.

 ブンちゃんは死んで、もうかさかさになってしまっているかもしれない.不安を胸に、シロップをたらしたビオラのベッドを探しますが、ブンちゃんはいませんでした.ビオラの中を掻き分けて探しても、たらしたシロップが少しついた花びらもありません。一体ブンちゃんはどうなってしまったのでしょう。 あれから、きっとシロップをなめて、エネルギーが戻ってきて元気になって空高く飛んで行ったのね. きっと、そう....。そうに違いないの.

 ブンちゃん、良かったね. 元気に遊覧飛行を楽しんで、そして時々、私たちに元気な姿を見せに帰ってきてね.待ってるからね...。ブンちゃん!

P.S. ブンちゃんの可愛いアンヨにも是非、注目してね.特に5分丈の黒いおズボンとその先の針金のように細い足で逆さまになって、しっかりつかまっている姿ももこもこして可愛いでしょう?

   





次ページへ

 K's Rose Garden トップへ戻る   Garden Essay目次へ戻る

* 当ホームページに掲載されている画像、文章を含む全ての内容の無許可転載、転用を固く禁止いたします。全て
の内容は日本の著作権法及び国際条約によって保護を受けています。