イングリッシュローズコテージの小さなお庭


Garden Essay - 小さなお庭で見つけた幸せ
 
2002年09月23日
早足でやってきた秋
 

 夏の猛暑が遠い昔に感じられるほど、今年の秋は早足でやってきたようです.まるで、いつも夏君とバトンタッチするのが、例年遅刻の常習犯であるのを、汚名返上するかのように今年は驚くほど早くから秋の風を送り込み、気が付かないうちにさりげなくスマートに登場した感じがします.例年、残暑を9月下旬近くまで頑張っている夏君は、おやまあ、今年はもう僕の出番はおしまいなの?とちょっと、残念そうに晴れ舞台の主役を秋君に譲り渡しているのが、客席からも見えそうです。 本当に9月前半の雨に続き、再び昨晩から降り続けた雨も、きょうのお昼頃からは春雨を思わせる静かで優しい降り方に代わり、優しいシャワーに打たれた薔薇たちの若葉もすっきり爽やかな表情に見えます.

 庭の向こう側にある雑木林も、8月の間あれほどセミたちに棲家を提供して、ヒヨドリたちの鳴き声も打ち消されるほどににぎやかな楽団を率いていたのが嘘のように、9月も中旬に入って何もかもが中途半端で、互いに疲れをぼんやりとねぎらい合っているかのようです。
早春,あれほど生命の息吹の感じられた、柔らかく芽吹く若葉の初々しさもなく、かといって力強く太陽に向かって青く生い茂った夏のエネルギーも感じられず、また美しい秋のカラーチェンジにはまだ早く、深い眠りに就いたあの冬の静寂もなく、日の光も薄ぼんやりと何もかもが中途半端のままに、夏の間気の向くままに伸びきった枝先を、どこか手持ち無沙汰に風に誘われるままにぶらぶらと振りながら、何か今ひとつインパクトが感じられなくて。

 そういう訳で私は昔から9月というものにあまり特別な思い入れを持たずにきたのですが,薔薇たちと暮らすようになり、この何もかも中途半端な時期が実はノスタルジックで優しい憂いを感じさせられる素晴らしい月であることに気がつきました。 確かに空はどんよりはっきりとしない,灰色を帯びていて、空気は水分を含んで重く、透明感に欠けていて....。でもこの中途半端なバックスクリーンが秋に向かい, 実は、1輪、また1輪楚々と咲く薔薇たちの美しさをひときわ引き立てるグッドシチュエーションとなるのです。

  1日のうちで薔薇たちがもっとも美しく見えるのは早朝、日の昇りきる前のしらじらとした朝靄のベールをかけたかのようなおごそかな空気の中です。特に5月の1番花のシーズンはたった今方開いたばかりの美しい姿に会いたくて、ベッドで目覚めると、顔も洗わずにそそくさと大急ぎで着替え、裸足のまま長靴に足を突っ込み、薔薇たちに会いに行きます。
朝露を含んで、しっとりとした清純な微笑をたたえている薔薇たちはこの世のものと思えない気高さと同時に慎みに満ちていて、毎朝私は圧倒されるほど感動し...。
これから秋が深まり、薔薇たちがゆったりと優雅に時間をかけて、1輪1輪開花を始めると、夏の月々、日本の地獄のような猛暑と熱波、恐ろしい程の湿度に耐え、よく忍耐したね。よくがんばったね。と5月とはまた違った気持ちで薔薇たちと向き合う感動を味わいます.そして、暑い暑いといってはエアコンに頼る自分の軟弱さを恥ずかしく思うのです。

  お庭の生き物達も随分みんな大きく成長しました.同じお母さんカマキリから生まれたたくさんの兄弟達をトカゲたちに食べられながらも、何とか生き残ったカマ君たちについてはこれからカマ君のお話のスペシャルページを作って少しずつ紹介しますが、きょうラベンダーセージの茂みの中で会った大きく成長したカマ君だけご覧になってね。

  
   どこにいるか分かるかしら?

                                        カマ君は私の視線に気がつき、じろりと私の方を見ています.

  お庭では先月に引き続き、ますますラベンダーセージが空に向かって背高く、幅もますます広がって大きく成長し、アーチの左側の小道に入れなくなり、いったんアーチをくぐって大回りしなければならなくなるほど。 ぼんやりと重たい空気の中、ブルーがとりわけ映えます。

  アーチの右側では、昨年の秋に植えたナツユキカズラの小さな赤ちゃん苗が、つる薔薇につかまりながら、とうとうアーチのてっぺんまで登りつめ、そこから優しく清楚な花をたくさん咲かせているので、その下を通ると素適な気分です.

  

               

 
  アーチの右側の小さなキッチンガーデンでは3月に種蒔きして育ててきたスウィートバジルがまだまだ元気に育っています.初夏からスパゲッティに使うためにたっぷりと切っては、また芽のある節から新しい若葉を両手を広げて伸ばし、バジルペーストのスパゲッティは勿論、サラダ、小さく切ったトマトとモツァレラチーズと一緒にガーリックトーストにのせてハーブオイルをちょっとかけていただく軽いブランチにと、楽しみながら使ってきましたが、あと1ヶ月くらいは十分活躍してくれそうです.(バッタ君たちも背中に家族を乗せてやって来ては食堂代わりに使っているようです.)
         


  シャリファ・アスマの横に去年植えたウインター・コスモスが大きくなりました.たくさんの蕾を付けているシャリファ・アスマの優しい少女を思わせるソフトな薔薇色と山吹きかかったイエローのコスモスが競演するとどんなカラーハーモニーを描くのでしょうか? 楽しみです.

    

   





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